出版流通の問題は昔から言われていました。私は10年ぐらい書店で働いてから2年ぐらい印刷会社で働いて、今は出版社の営業をしています。隆祥館書店・二村さんの話はよくわかります。私がいた書店は広さ30坪の町の本屋さんでした。それでも、多くの人に来てもらえたお店だった事を思い出します。閉店をきっかけに転職しました。
図書普及協会によると図書カードの読み取り機設置店は、8,000件ぐらいあります。そこに、まんべんなく本を行きわたらせるためには、8,000冊必要になってきます。
新刊の初版部数は平均で5,000冊スタートです。つまりこの時点で足りていないのです。売れている作家さんの本で10,000冊作るのもあれば、実用書などで3,000冊しか作らないものもあります。その平均が5,000冊。
ここで、紀伊國屋書店・ジュンク堂書店をはじめ大型書店を中心に商品が出庫されると、ただでさえ足りないものが、もっと足りなくなり、結果小さな書店には、新刊の入荷がない。という現実が起こります。
さらに問題なのは、出版社は【どうせ返品があるから、重版は今はしない】【なんで倉庫に在庫が残っているんだ。営業、書店へ行って撒いてこい】となって、在庫を持っていません。むしろ、ここが問題!!
ランク配本によって、入荷がある、ない問題は改善すべき問題ですが、出版社が新刊の在庫を持たない問題の方が悪質です。
お客様「この本が欲しいんですけど」
書店「少々お待ちください。今検索します」
お客様「○○さんの新作なんですよ。楽しみにしてて・・・」
書店「お待たせしました。すいません、うちには在庫がないです。取り寄せでもかまいませんか?」
お客様「えっ、残念・・・。どのくらいかかる?」
書店「出版社に在庫があれば、1週間~10日で入荷します」
お客様「えっ、そんなにかかるの!?今の時代に・・・。でも、待つよ。読みたいし、ここで買いたいから」
書店「すいません。ありがとうございます。出版社に在庫を確認しますね」
出版社「その商品は、ただいま品切れ中で、返品待ち保留です」
書店「お客様、出版社に在庫がないので、取り寄せできないので他の書店さんでさがしてください。または、ア○○ンなどでお買い求めください」
お客様「残念・・・。いつもここで買ってたから。また来るよ・・・」
というやりとりは、新刊の入ってこない書店では日常でした。この時点で出版社に在庫があれば、待ってでも欲しい、というお客様に対応できるのです。なのに、在庫を持たないから、お客様がいなくなる。出版社は、他で売れるから関係ない的な態度です。私のいる出版社の社長も似たような考えで、倉庫をカラにしろ、が口癖のようなものです。
この現状を打破するのは、難しいと思います。なにせ、ガラパゴスな業界で古い慣習で動いています。ただ、出版業界も今までとは違う価値観、行動をしないとまだまだ下がり続けると思います。
私個人の考え方ですが、新刊の点数を減らして初版部数を増やして、発売前に情報を開示して予約部数を確保して、発売してから出版社が売る努力をする。
私もできることをがんばります。