変われない出版社なんていらない
業界不振の話です。今回は長い記事になります。
1996年をピークに下がり続ける出版業界。その最前線で頑張っている書店が激減しています。ピーク時には2万店あったものが、今では1万店です。
普段仕事をしていても書店の減数は感じています。この2年間での書店閉店はいままでと違います。A書店が閉店しても、B書店が開店。書店自体は残っている。というのが今まででしたが、今はA書店が閉店すると100円ショップだったり、ドラッグストアになり、違う業態になっています。
96年から20年以上、下がり続けている業界。それでも、ネットニュースで話題に挙げられているだけ、ありがたい業界です。注目はされているけれど、その注目をお金に、収益にできない業界です。
書店の実情は、本を売ることを諦めているように感じます。大型書店のジュンク堂でも本棚数を減らして文房具を扱うようになりました。話題になっている小型書店もカフェとの併設型が多いです。本だけを売っている店舗がかなり少なくなりました。
本以外で人に来てもらうシステムです。来てもらえれば、本を買ってくれるのでは!?と来客者を増やす努力をしてくれています。本を信じてくれているので、ありがたい話です。
書店と文具は相性がいいと思います。不思議と本好きな方は文具好きが多いです。店舗経営、店舗として生き残るためには売れないものの売り場を減らして売れるものを増やす。これは、とっても当たり前の流れです。
けれども、出版社側はこの流れを良くは思っていない人もいます。私が勤めている社内でもそういう声が出ています。
本が売れる努力もしてない人に限って、他者のせいにしている。
これが出版社の営業の現実です。メーカーの営業がこんな考え方では、最前線にある書店から見放されるわけです。
出版社は、インターネット、文字を読まない若者、時代のせいにしています。本が売れる努力をしないで。家電メーカーはCMで商品を告知しているし、ミュージシャンは動画で曲をアピールしている。本はどうでしょう?作り手である出版社が告知をしているでしょうか?強いて言えば、賞を設けてマスコミにアピールしたり、映画化、アニメ化ぐらいです。小説やコミックはこれでいいですが、他にも本は作られています。実用書、ビジネス書、専門書などのジャンルです。この3ジャンルをトータルで考えれば、小説やコミックより多く作られているのに、告知は少ないです。
児童書は、少子化にも関わらず上がりもせず、落ちもせずです。少子化なのに横ばい、と考えると好調と捉えることができるの今回は例に挙げませんでした。
愚痴っぽくなってしまいました。
書店の努力に対して出版社は努力をしていない、ということが私の考えです。
本1点で利益が出る最低実売部数は5,000部です。1億人いる日本です。25~59歳の人口は5,600万人(総務省統計局のデータhttps://www.stat.go.jp/data/nihon/02.html)ぐらいいます。これだけの母数がある中、5,000部売れれば赤字にはならない。単純に1万人に1冊の割合0.01%で売れれば赤字にならない。マーケティングをしっかりやればできそう。
やみくもに企画を立てて書籍化して、取次によって配本して売れなければ返品してもらう。返品された本は再び倉庫から出ることなく処分される。
出版社がこの流れを止めて1冊1冊本を責任もって作ってほしい。少なくとも売れた本に似たような本が大量に作られるのは作り手として芸がない、と自覚してほしい。
けれども、書店と同じように小型の新しいスタイルの出版社も生まれています。今ある出版社が変わるか、新しい出版社が躍進するか?書店の変化と共に出版社の変化にも注目が必要です。
出版不景気は書店は悪くありません。むしろ被害者です。この長い不景気を作っているのは変われない出版社が多すぎるからです。